暗号資産(仮想通貨)取引所BitMEXのアーサー・ヘイズ共同創業者は6日、エッセイ「Situationship」を公開した。
同氏は現在のAI投資ブームが2000年のドットコム型バブルではなく、2008年の信用危機に近い構造を持つと指摘し、その崩壊が仮想通貨市場、特にビットコイン(BTC)に追い風となる可能性があると論じた。
あくまでヘイズ氏個人の市場分析であり、危機の発生や政策対応が確定した事実ではない。
AI投資は不動産型と指摘
ヘイズ氏はエッセイの中で、データセンターや半導体、電力インフラといったAI関連投資の構造が、伝統的なソフトウエア企業の成長サイクルよりも、不動産開発の資金調達に近いと主張した。
巨額の資本支出が借り入れによって支えられている点が特徴とされ、収益化の遅れが表面化した場合、投資の損失が特定企業の株価下落にとどまらず、貸し手や事業金融の仕組み全体に及ぶ可能性があるとした。
この構造上の違いが、2000年のドットコムバブル崩壊とは異なる形の下落局面を招くというのがヘイズ氏の見立てである。ソフトウエア株が過大評価されて調整した2000年当時とは異なり、今回は債務や借り換え、金融仲介機関を通じて損失が伝播しやすいと分析した。
2008年型危機との類似性
ヘイズ氏は、AIブームの崩壊が2008年の信用危機に似た形で進行する可能性があると述べた。
当時の危機は住宅ローン関連の債務が金融システム全体に波及したことが特徴だったが、今回はAI関連の借り入れや事業金融の焦げ付きが同様の役割を果たし得るという見立てである。
一部の報道では、ヘイズ氏がAIによる事務職などの雇用喪失が消費者信用や住宅ローンの実績悪化につながり、それが銀行部門にストレスとして伝わる可能性も指摘したとされている。
ただし、これらは同氏の仮説的な分析であり、実際に信用収縮が始まっている証拠として提示されたものではない。
FRBの緩和とビットコイン
ヘイズ氏の議論の核心は、AI関連の金融ストレスが広がった場合、米連邦準備制度理事会(FRB)が大規模な緩和策や資金供給に動くとの予想である。
同氏はビットコインを「グローバルなフィアット流動性の火災報知器」と表現し、緩和による流動性拡大が最終的に資金をビットコインへ呼び戻すと主張した。
この見方によれば、金融緩和が実施された場合にまず恩恵を受けるのはビットコインであり、その後アルトコインを含む広範な仮想通貨市場にも波及する可能性があるとされる。ただし、これはFRBの実際の政策判断を予測したものではなく、ヘイズ氏独自のシナリオ分析にとどまる。
現状は仮説の域内
複数の報道は、ヘイズ氏の主張を確定した危機の予兆としてではなく、あくまで一つの市場シナリオとして紹介している。
AI関連の主要企業は現時点で利益を上げ続けており、資本支出も継続していることから、2008年型の信用危機が既に進行しているとみなす根拠は乏しいとの指摘もある。
このため、ヘイズ氏の議論は将来のリスクシナリオを提示するものであり、現時点で金融システムに広範な機能不全が発生しているわけではない点を報道は強調している。
今後の市場への影響
今後の焦点は、AI関連企業の資本支出とその収益化がどの程度整合的に進むかにある。ヘイズ氏の想定通りに債務の焦げ付きが広がれば、金融当局の対応策が注目され、その結果として仮想通貨市場への資金流入が議論されることになる。
一方で、AI企業の業績が想定通り拡大を続ける場合、同氏が描くような信用危機型の展開には至らない可能性もある。市場関係者は、AI関連の資本支出動向や大手企業の決算、FRBの金融政策の方向性を注視しながら、ビットコインをはじめとする仮想通貨価格への影響を見極める展開になるとみられる。